悪い男に騙されて
一護は別に喧嘩好きというわけではない。だがオレンジ色の髪をしていると、世間で言う不良という輩達からとにかく嫌な意味でモテるのだ。
一人でいるときに絡まれた場合は無視してとにかく相手にしないようにしている。だが悪友の恋次や修兵と連れ立っているときはそうはいかない。恋次は挑発に乗りやすいし、修兵はその場のノリで喧嘩をしたりしなかったり。
そして一護一人で男二人を止められる筈も無く、現在目の前で派手な喧嘩が行われていたりする。
「オラァ!」
いつもよりもドスの効いた恋次の声。長髪の不良に殴り掛かったが、避けられて腹に蹴りを入れられている。随分と綺麗な顔をしたその長髪の不良は蹲った恋次を見て、にやりと笑いクイクイと手招きしてみせた。
駄目だ、そんなことをすれば恋次はキレてもう止めることはできない。一護は内心頭を抱え、現実には遠い目をした。
「このチビっ、逃げんじゃねえ!」
今度は修兵の苛々とした声。相手は背の低い不良。先ほどから攻撃が当たらないのが修兵には気に食わないらしい。ちょこまかと避けては修兵を馬鹿にしたような笑みを貼付けるその不良は、すれ違い様足を引っかけた。勢い余って修兵は地面に手をついてしまう。
どうしてこんなことになったんだろうと一護は溜息をついた。喧嘩を売ってきたのは相手が先で、だからといって悪いのは相手ではなく、喧嘩を買った恋次が一番悪くてバカだと一護は思った。そして二番目に悪いのは修兵だ。たいていは挑発に乗りやすい恋次を止めてくれるのに、今回は一緒になって喧嘩なんてしてる。
バカ二人を眺めていると、先ほどから喧嘩に参加していない黒髪の不良(一護にはむしろ優等生に見える)と目が合った。同じくうんざりした視線で、この人も迷惑してんだなーと一護は思い、小さく頭なんて下げたりしてみた。すると向こうも小さく頷いた。
このまま知らないフリして一護は帰ってしまいたかったが、後でうるさいのでそうすることもできない。きっと黒髪優等生風の不良も同じ理由なのだろう。
それにしても暇だ。ここは喧嘩が終わったときの為にジュースでも買いに行ってやろうか。もちろん代金はバカ二人持ちだとして、黒髪優等生の分も買っておこうかと一護が自販機を探して視線を彷徨わせたとき、
「よぉ、お前は参加しねえのかよ」
真っ青な髪。
鋭すぎる目。
これはマジでワルだと一護が思った瞬間、横面を殴られた。
「‥‥‥っつ、」
痛い、痛すぎる。一護がしたくもない喧嘩で受けてきた拳の中で、一番の威力と容赦のなさだった。星が散ると言うが本当に散った。小さな無数の光が視界を飛ぶ。地面に倒れ込んでいると遅れて気が付いた。
「立てよ」
喧嘩なんて一護は大嫌いだ。痛いし疲れるし服は汚れるしやっぱり痛い。
今の格好はメンズで固めていた。そのせいもあって相手は一護が女だなんて思いもせずに殴ってきたのだろうが、この青い頭の不良は女でさえも殴ってきそうなほどの凶悪さが滲み出ていた。
そして何度も言うようだが一護は喧嘩が嫌いだ。だがどんな挑発にも耐えられるほどに、一護はできた人間ではなかった。
「っの野郎!」
いきなり殴られて怒らない奴がいれば一護は是非ともその忍耐力のコツを教えてもらいたい。すぐさま起き上がると唇に手をやり、血が滲んでいることに気が付いて闘争心に更なる火がつけられた。
一護がやる気だと見て取ると、青い髪の不良はぎらぎらとした猛獣のような目を向けてきた。サディスティックなその顔をタコ殴りにしてやりたい、一護がそう思ったと同時に拳はそれを実行していた。
「ははっ」
「笑うんじゃねえよ!!」
最初の一発は避けられた。だが空を切った拳は体を回転する力に変えて、回し蹴りを一護が殴られた同じ横面に叩き込んでやった。
これでやられたしやり返した。これ以上はもう喧嘩をする必要はないと思った一護だったが、それは甘い考えだった。
「‥‥‥いいな、お前、面白え」
「あ?」
唇の端が切れ、滲んだ血を舐めると青い髪の不良は凶悪に笑った。
ヤバい、と思ったときにはもう遅い。
結局は三組のバカが出来上がってしまっていた。
案の定、他校の生徒と喧嘩をしたことは学校側にバレてしまった。
「聞いたで一護、隣町ボーイズと乱闘したんやって?」
「ああそうだよ今から呼び出しだバカヤロー」
もしもあのまま喧嘩に参加していなければ、呼び出されたとしても一護は応じるつもりは無かったが、しっかりと喧嘩をしてしまった手前、無視するわけにはいかなかった。
「ったくよー、喧嘩しただけで呼び出されるなんてやってらんねえよな」
「そうっすよ、喧嘩しないで陰でタバコ吸ったりしてる奴らのほうがよっぽどワルって話ですよね」
「おい、頼むからそれを教師の前で言うんじゃねえぞ」
バカ二人に巻き込まれて自分までバカになってしまった。喧嘩をした後で一護は激しく後悔したが、背後から迫るパトカーのサイレンに追い立てられてそれどころではなかった。
今は喧嘩なんてもう二度としない、という誓いを立てているが、その誓いが一体これで何度目だ、と自分で気付いて一護は落ち込んだ。
「もうお前らとは一緒に歩かねえ。半径300メートル以内に入ったら訴えるからな」
「おい、俺らをストーカーの如く言うんじゃねえよ」
「そっちのほうがマシだ。ストーカーは半殺しにしてお終いだけど、お前らはそうしてもしつこく付きまとってきそうでタチが悪い」
一度絶縁宣言をしたことがあるが、翌日には聞いていたのかと疑うほど何も無かったように傍に来られたという過去があった。
「生徒指導室で乱闘になったら、俺は逃げるからな」
先に喧嘩を仕掛けたとして、相手側の不良が現在生徒指導室へとやってきているらしい。だが素直に謝罪なんてことにはなる筈が無いと一護は思っていた。
特に一護が相手をした青い髪の不良、最後まで好戦的な態度だった男。
「あいつ、あーなんだっけ、アンデルセン‥‥‥じゃねーな、ええっと」
「なんか意味合い的には近えよ、んーと、そうだグリム、グリム‥‥‥」
「駄目だ、グリム童話しか思いつかねえよ」
「とにかくそいつが殴り掛かってきたら、お前らを盾にして俺は逃げる」
一週間経ったとはいえ、一護の顔には痣が残っていた。喧嘩をして帰った日には、父親に嘆かれ妹二人は血だるまの姉を見て絶句していた。湿布のにおいが馴染みの香りとなってしまい、香水の意味が無い、と修兵はぼやいてた。
「失礼しまーす‥‥‥」
一番年上の修兵を先頭に、恋次、一護が部屋へと入った。
中には一護の学校の教師と相手側の教師、そして喧嘩相手四人(黒髪優等生も巻き込まれていた)。
久しぶりの再会だ。それぞれの憎き敵同士の視線がぶつかり合った、と思いきや一護だけは青い髪の不良の視線を超えて、その後ろに立つ教師へと釘付けになっていた。
「オレンジ色の髪だと聞いてね、もしやと思ったんだ」
「‥‥‥‥‥!!」
一瞬にして汗が噴き出て、一護の背中を流れていった。
「なんで、あんたが、」
「この子達の担任なんだ」
「‥‥‥教師? ‥‥‥あんたが?」
にっこりと頷かれて一護は目を剥いた。とてもじゃないが目の前の男は子供好きでもなければ教育に熱心でもない。自分が一番、周りは駒だと平然と言ってのけるような男なのだ。
「極道が教師なんておかしいかな?」
極道、という単語に部屋にいた人間が息を呑んで、信じられないといった視線を向けた。平然としているのは相手側の不良達と一護だけだ。
「ところで君達」
男がやんわりと言葉を発すると、不良達はびくりと肩を震わせた。分かる、分かるぞその気持ち、と一護は喧嘩相手だったが今は同情を含ませた視線を送った。
「あのオレンジ色の子を殴ったのは誰なのかな」
三人一斉に青い髪の不良を指差した。
「てめえらっ‥‥‥!」
「そうか、グリムジョー、君か」
「不意打ちで殴っていました」
「ウルキオラ、てめえ!」
殴り掛かろうとしたグリムジョーを止めたのは茶髪の男だった。背後から頭を鷲掴みにされて、グリムジョーは固まった。
「女の子を殴るなんて感心しないな」
その言葉に不良達ははっとしたように一護を見た。たった今気が付いた、という顔だ。今の一護は当然女子の制服を着ているので、紛うことなく女に見えた。
「彼は私が責任を持って指導します。ほら、君達謝りなさい」
グリムジョー以外は助かった、という表情をありありと見せて、そして意外にも素直に謝ってきた。恋次と修兵は戸惑ってしまい、ぽかんと立ち尽くしている。
一護には馴染みの光景だ。この男に逆らえる人間は稀なのだから。
「すまないね、後で家に挨拶に行くから」
「来なくていい! むしろ来んな!!」
一護の恐いもの知らずな言動に、不良達は顔色を悪くする。グリムジョーは掴まれた頭部がミシミシと音を立てるのを聞いて、一護に必死の形相を向けた。視線があった一護は、このままでは潰れたトマトができる、と思い渋々訪問を了承するハメになってしまった。
「乗って」
放課後、下校する生徒が少なくなった校門で一護は嫌そうに顔をしかめた。
目の前には一護が知らない高級車。銃痕らしき穴が見えたが、さっと視線を逸らして見なかったことにした。
「家まで送るよ」
「近いんで結構です」
「遠慮しないで。ああ、窓ガラスは防弾だから安心していいよ」
そんなことを聞くとますます安心できない。教師をやっていると言うが、極道の世界から完全に足抜けした訳ではないだろう。なんせ目の前の男は若と呼ばれていたのだから。
「なんで教師やってんの」
「それは車に乗ってくれたら話すよ」
乗りたくはないが、興味はあった。人を人とも思わない男がなぜ教師になったのかが知りたいと一護は思ってしまった。
仕方なく後部座席のドアを開けようとしたが、びくともしない。ロックは閉められており、助手席だけが開けられていた。
にっこりと笑って無言で助手席を勧めてくる男に、生徒は苦労しているだろうな、と一護は同情せずにはいられない。あの不良達の怯えようを見ればそんなこと一目瞭然だった。
助手席に乗り込むと男性用の香水の香りが一護の鼻孔をくすぐった。懐かしい香りに、ずっと同じ香水を使っているのだと知った。
「五年ぶりだね。綺麗になった」
「あんたは老けた。その眼鏡、なんだよ」
酷薄そうな目が眼鏡によってうまいぐあいに隠れている。一見すると温厚な高校教師にしか見えなかった。
「藍染先生って、呼ばれてんの?」
「今はね。最初は眼鏡野郎って言われて、随分と手がかかったよ」
嘘だ、と一護は思った。その眼鏡野郎と言った生徒の生死が気になったが、聞くのは恐かったので一護はその疑問を胸の内にしまっておいた。
五年、一度も会わなかった。藍染は表面的には変わったようだ。
一護が物心ついたときには実家の診療所に訳ありの患者が何度も運び込まれていた。最近知ったことだが祖父の代からそういう裏の世界の人間を診るところだったらしい。そういう繋がりで幼かった一護は、怪我をした組の人間を運んできた藍染と出会ったのだ。
「‥‥‥ありがとな」
唐突な一護の礼の言葉に藍染はちらりと視線をよこした。運転しながらバックミラーを見ると、一護は外の景色を眺めながらも少し居心地悪そうに身を捩っていた。
「うちの診療所さ、まともなのにしてくれたのあんただろ」
五年前、藍染が診療所に顔を出さなくなったのを境に、一護の実家は普通の診療所となった。もちろん運び込まれるのは一般市民だけで、その変化を当時はおかしく思っていたが、藍染の手回しがあったのではないかと思うようになったのは最近のことだった。
「君のその恐いもの知らずな性格、僕達のせいじゃないかと思ってね」
五年間会わなかったが、遠くから姿を見ていた。不良に絡まれても動じずに、ときには喧嘩をする一護を見ていると、幼い頃の環境がそうさせている気がした。そこらの不良なんて極道の人間に比べてみれば可愛いものだからだ。
「普通に生きてほしかったんだ」
子供だからか、一家の跡取りである藍染に屈託なく接してくれたのは一護だけだ。かけがいのない存在、守ってみせると誓ったのは五年前だ。
「‥‥‥どうして教師になったのか教えてあげようか」
一護が窓の外を向いていた顔をぱっと藍染のほうへと向けた。
「簡単だよ。君が、教師となら結婚するって言ったからだよ」
「‥‥‥‥‥‥‥え」
「覚えてないのかい?僕が結婚してくれって言ったら君は極道は嫌だって言ったじゃないか。だったらどんな職業だったらいいんだいって聞いたら、教師だ、って」
言った覚えが無い。一護はそもそも結婚してくれと聞かれた覚えも無かった。必死になって記憶をほじくり返してみるが、思い当たるふしは無かった。
「今つけてる香水の香りが好きだって言ったのも君だよ。だからずっと同じものをつけているんだ」
たしかにこの香りは好きだ。言ったかもしれないが、だからといってそれを律儀に守っている隣の男は一体何なんだと一護は思った。
「あんた、ロリコンだったのか」
正確な年齢は知らないが、十歳以上は離れている筈だ。幼い自分にそういう感情を抱いているということはそういうことだろう。
「大丈夫。当時君以外の幼女に欲情したことは無いし、今も君以外の女性に興味も無い」
こちらを真っすぐに見つめてそう言う藍染に、運転は、と一護は焦ったがいつの間にか車は停車していた。家に着いたのかと外を見るが、一護が知らない場所だった。ついでに人気も無い。
「降りる!!」
どんなに鈍感な女でもこれは危険だと思う筈だ。一護もその例に漏れず、すぐさま車から降りようとロックを解除させたが、すぐさまガチリと閉められた。何度か同じ動作を繰り返していると、突然体が後方へと倒れてしまった。
「やめろ! 変態っ、変態眼鏡野郎!!」
覆いかぶさってくる藍染から逃げようにもここは車内だし、忘れていたがシートベルトをしたままで、つまりは一護に逃げ場は無かった。
「一人の男の人生を変えたんだ。責任取ってくれてもいいだろう?」
「それはっ」
頼んでいない、とは言えなかった。今覆いかぶさってくる男のお陰で実家の診療所はまともになれたのだし、と思うと一護の抵抗が弱まってしまう。
「なんで? なんで俺? 十歳やそこらのガキだった俺の為になんでそこまでするわけ?」
「さあ、どうしてかな。ただ君だけは、鮮やかだったから」
汚いことをしてきた手でも一護は平気で触れてきた。怪我を負って血まみれになった部下の手さえ、一護はしっかりと握りしめ励ましていた。
何も知らない無垢で馬鹿な子供だと最初は侮っていた。だが違う、一護はそうではなかった。
「僕が散々脅かしても、君は離れていったりしなかっただろう」
部下は義務で傍にいたが、内心では自分をひどく恐れていたのを知っていた。
「君を逃せば、僕は一人だ。だから必死で君にふさわしくあろうと、この五年頑張ってきたんだよ」
オレンジ色の髪を撫でて、そっと唇を落とした。それだけでも一護はぎゅっと目を瞑り、顔を真っ赤にさせた。初心な反応に、笑みがこぼれる。男と付き合ったことなど無いと知っていた。
「‥‥‥俺だけ? じゃあ、俺が拒絶したらどうするんだよ」
「とても、悲しいし寂しい。死んでしまいそうだ」
逆光で藍染の表情は分かりにくかったが、その声だけで一護は胸を締めつけられた。絶対に抵抗するつもりでいたから、そんな風に言われてしまうと一護の中でどうしよう、と感情が揺らいでくる。
ずっと年上で五年も会わなかった男に愛の告白をされれば当然断る一護だが、そんなことをすれば藍染は本当に死んでしまいそうな気がする。
「どうしよ‥‥‥」
迷う素振りを見せる一護にくすりと笑むと、藍染は不意打ちで唇を重ねた。驚いた一護が目を見開いて、それを至近距離で藍染は切なげに見つめ返した。その目を見てしまうと一護は抵抗しようとした手を迷ったように彷徨わせる。
藍染はこれ以上は無いというくらい優しく一護の唇を食んだ。恐がらせないように、緩く柔く唇同士を這わせる。苦しくないように何度も唇を離しては重ねるという行為を繰り返せば、やがて一護は受け入れるように目を閉じた。
「‥‥‥‥嫌、だったかい」
実際は短かったが、長いようにも感じられた口付けを終えて一護はそう聞かれれば、ぼうっとした頭で考えて、嫌では無かったので素直に首を横に振った。
「よかった。‥‥‥ねえ、要はそういうことなんだよ」
そう言われても一護は分からなかったが、嫌じゃなかっただろう?と聞かれると頷いた。
つまりは、そういうことだと。
「嫌じゃないから、好きってこと?」
「そうだと、僕は嬉しいな」
深く考える必要は無いのかもしれない。一護がそう思うと、再び唇が下りてきた。
まだよくは分からなかったが、この口付けが嫌じゃなかったらそうなのだろうと一護は思うことにした。そして優しく包み込むような口付けは、少しも嫌なものではなかった。
それから二人、想いを確かめ合うように、唇を何度も重ね合わせた。
「騙された!」
一護がそう言って藍染の胸を殴るのを、グリムジョー達は恐ろしい光景でも見るかのように顔を引き攣らせていた。
あれから仲の良くなったグリムジョー達と一緒に遊んでいると、藍染の陰口大会へと移行してしまったのだ。一人の表情が凍りついたので振り返るとそこに藍染がいたというわけだ。
「君を騙したことなんて一度も無いよ」
「嘘つけ!! 何が嫌じゃないなら好きだ!」
男と付き合ったことが無い純情な一護はころっと騙されてしまった。
すべては目の前の男の計算だったのだ。
「別れるからな!」
そう啖呵を切って一護は肩を怒らせてその場を去ろうとした。だが藍染は逃すまいと一護の腕を掴み、乗ってきた車へと放り込んでしまった。
「君達」
手が出せず(むしろ出したら殺される)に眺めているだけだったグリムジョー達は、びしっと背筋を伸ばした。
「ほどほどにね。明日はちゃんと学校に来るんだよ」
教師らしい言葉だが、散乱する酒の缶に藍染は目もくれなかった。不良達を優しい眼差しで見ると、癒されると評判の笑みを向けて車に乗り込み去って行った。
「助かった‥‥‥」
そう言ったのはディ・ロイだ。隣に立つイールフォルトとウルキオラも無言で頷いていた。
藍染の陰口を言って無傷でいられるのは一護のお陰だ。あの日、喧嘩を売って良かったと心底思った不良達は、心の中で一番不幸な一護に感謝した。