拍手小説<学園パラレル>

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「ちょ、やばくない?」
「やばいよなー。やばいけど、でも関わりたくない」
 真っ青な空の下で真っ青な髪をしたグリムジョーが相手も真っ青になりそうな形相で仁王立ちしていた。
「あいつ死ぬって。止めなくていいのかよ?」
「俺が止めんのー? めんどくせ」
「席隣じゃん。転入生の面倒見ろって先生言ってたし。今まさに面倒を見る場面だろ」
 グリムジョーともう一人。今日転入してきたばかりの男子生徒がだらーんと力の抜けきった様子で立っていた。
「俺の為に争わないで、って言ったら?」
「そんなイタい俺は嫌だ」
 人気のない校舎裏。壁から顔だけを突き出して一護とロイは二人の様子を伺っていた。緊迫感は微塵もない。
「そもそもアイツが一護にべたべたするからさー」
 一護はグリムジョーのお気に入り。それを知らない転入生は一護に纏わりついてグリムジョーの怒りを買った。
「あ、始まるみたい」
「リンチじゃなくてミンチ決定だな」
 あくまで他人事。拳の具合を確かめていたグリムジョーが転入生へと向かっていくのを一護達は固唾をのんで見守った、訳ではなくユルいテンションで眺めていた。
「終わったな。‥‥‥‥一護?」
「あーもしもしウルキオラ?」
 携帯片手に一護は通話していた。相手はウルキオラ。
「ちょっと校舎裏に来て。‥‥‥‥え? いやいや告白とかじゃないから」
 グリムジョーと転入生との距離はあと数歩。
「とにかく来いって。‥‥‥‥あぁっ、やばいっ、やられる!」
 転入生が胸ぐらを掴まれた。ワンパンチノックダウンはすぐ間近だ。
「え? 来てくれんの? ‥‥‥‥切れた。大丈夫かな」
 ”やられる”と言った瞬間にウルキオラは”すぐに行く”と言って電話を切った。とりあえず来てくれるらしい。
「ウルキオラが来たら余計ややこしくなるんじゃないの」
「対戦相手がウルキオラに変わる。そしたら転入生は救われる。完璧だ」
「そーかな」
 ロイの呆れた視線を無視して一護は二人の攻防に目を転じた。グリムジョーの凶悪な目つきを間近で見ても転入生の表情は少しも揺らぎはしない。
 度胸だけはあるらしい。そして転入生の半眼がすい、と動く。
「おー、一護やん」
「うわ、見つかった!」
 ロイと二人でわたわたと慌てて隠れようとしたがもう遅い。転入生はどうやったのか胸ぐらを掴むグリムジョーから抜け出すと、一護の元へと軽い足取りで近寄ってきた。
「お昼のお誘い? 嬉しいわー」
「俺もう弁当食ったし」
「そしたら何? デートのお誘い?」
「ていうか顔が近いから。適正な人との距離ってもん知ってる?」
 やたらと一護に顔を近づけてくる転入生に、むっと顔を顰めたロイが割って入る。しかし小さな体はぺいっと横に押しのけられた。
「ミクロマンはどいとれや。なあ一護、今日は一緒に帰らへん?」
「手ぇ握んな! 知りあって一ヶ月は経たないと握れねえんだぞ。俺がそーだった!」
 腕力では勝てないと早々に悟ったロイは、きゃんきゃんと吠えながらも一護の背中にくっついて抗議した。それを転入生は不機嫌そうに一瞥したが、無視することに決めたらしく、一護の手を握って離さない。
「なあ、彼氏おる? まあいてもかまへんけど。俺とお付き合いせえへん?」
「しない。俺、今お付き合いしてる人にゾッコンだから」
 この男からは人の話を聞かない人間特有の匂いがする。
 一護はそれを敏感に察知し、きっぱりはっきり嘘を交えて断った。
「誰だよそれ!?」
 まったく無視されていたグリムジョーがここになって会話に割り込んできた。転入生に軽くあしらわれて先ほどまで怒りに震えていたのだが、一護の一言にあっさり騙されている。
「えぇーっと、お前のよく知ってる人っぽい?」
「ウルキオラか!?」
「俺がどうした」
 突然現れたウルキオラに”あ、ややこしい”と思ったのは一護だけではない。ロイはすぐに一護の嘘を見抜いていたが、冷静でいることができないグリムジョーは早くもウルキオラに殺気を放っていた。
「今日こそぶっ殺してやる」
「何のことだ死ね」
 無表情で言い返すウルキオラだが何やら機嫌が悪い。一護との通話で何か勘違いでもしたのか、普段はグリムジョーを相手にはしない筈なのに、暗い目には剣呑な火が灯っていた。
「あーあー一護、どうすんの」
「いつものことだろ。時間が解決してくれる」
「なんやカッコええなあ」
 すっかり馴染んだ転入生に違和感を感じることも無く、一護は喧嘩を始める五秒前の同級生二人を眺めていた。そして自分にできることはない、と潔く結論付けるとあっさりとその場を後にした。
「ちょお待ってえな」
「だから手ぇ握んなって!」
「あぁもう、うるっさい」
 二人は息の合った調子でぴたりと静かになった。
 それに溜息をつく。厄介なのがまた増えた。
「‥‥‥‥‥明日休もっかな」
 一人でゆっくりしたい。
「サボり? どこ遊びに行く?」
「‥‥‥‥‥‥‥」
 ‥‥‥‥一人で。
「あ、っえ、一護? どこ行くんだよ!」
 突然走り出した一護の後方からは驚いたロイの声が聞こえる。が、一護は無視だ。
 聞こえない、今は聞こえない。
 五時間目が何だ。六時間目なんか知るか。ホームルーム? 横文字使うなここは日本だ!
 財布と携帯があれば今の世の中やっていける。鞄も持たずに門を出て、一護は自由を求めて疾走する。
「一護ー!?」

 止めてくれるな友人よ。
 人間、結局は一人なんだよ。
 いつか読んだ本のフレーズを、今は激しく同意した。


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