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  薔薇の眠り  

「出世祝にボク、欲しいもんがあるんですけど」
「図々しいね」
 三番隊の隊長へと就任したギンが元上司、今同僚の藍染ににいっと笑みを向けた。
 すべての言動の内およそ九割が碌でもないギンのことだ、どうせ今から碌でもないことを言うのだろう。だが藍染は聞いてやるだけ聞いてやることにした。むしろこれが出世祝だった。
「あんなあ、」
 焦らしたように言葉を切るギンに、焦れるどころか元から聞きたくもない藍染はあと二秒で言わなかったらこの場を去ろうと考えていた。
 だがあと0、5秒のところでギンが口を開いた。
「ボク、藍染はんのお姉はんが欲しいなー」
 きっかり五秒は沈黙し、
「あはは、駄目だよ、死ね」
「死なへん!」
 祝は貰うものではなくもぎとるものだ。その日ギンはそう悟った。






 だっらーと血を滴らせて、少女は蹲っていた。
「やべ、床が、」
 慌てて懐から手拭を出して床を拭いたのだが、次から次へと唇から血が落ちてくるのでそれは意味が無かった。今日は調子がいいと思ったのだが、まさか突然喀血するとは思わなかった。
 こんな状態で会いにいけば逆に迷惑をかけるだけだ。今日は出直そうと思ったとき、誰かが近づいてくる気配を感じた。
「な!?」
 驚かれるのも当然だ。口の周りを血で汚している人間を見れば誰だって驚く。
「だ、大丈夫か」
「あ、どうも、大丈夫です。いつものことなんで」
「どこか悪いのか」
「肺が」
「それは奇遇だな。実は俺もなんだ」
「うわー偶然ですね」
 二人でにこやかに会話を進めていたが、端から見ると一方は血を流しているのだ、ぎょっとして思わず後じさる隊員がいたことに二人はまったく気が付いていなかった。
「そうなんだ、病気で髪が白く」
「まあな。一護は綺麗なオレンジ色だな」
「これでも結構色は落ちたんだ。最初は茶色だったし」
 ちょんちょんと己の髪を引っ張る仕草は子供らしくて浮竹は思わず笑みになってしまう。歳は同じくらいだそうだが、とてもそうは見えなかった。
 既に血を拭って四番隊へと連れて行こうとしたのだが、それは丁重に断られてしまった。護廷で働く弟に知られれば心配をかけてしまう、それはどうしても避けたいのだそうだ。
「よければうちの隊舎にこないか。お茶をごちそうしよう」
「でも、」
「決まりだ」
 穏やかそうに見えて随分と大胆なのか、浮竹は渋る一護を抱き上げて十三番隊の隊舎へと歩みを進めた。
 一護のほうはまさか抱き上げられるとは思わず、しばらくぽかんとしていた。
「あの、」
「軽いな。ちゃんと食べないと駄目だぞ」
 そう言う浮竹はがっしりとしていて筋肉も固い。抱き上げられて一護は自然と胸に手をついたのだが、死覇装の上からでもそれが十分に伝わってきた。
 それにくらべて自分は。小食だししょっちゅう体調を崩すせいで痩せ細っていた。骨が浮き出ていて、それは病気のせいだから仕方が無いと思っていたのだが、浮竹を見るとそんなふうに思っていた自分が情けなく思えてきた。
「まあ、俺の場合は食欲がありすぎて本当に病人かと疑われるときがあるがな」
 落ち込んだ一護を気遣って浮竹が気にするなとばかりに冗談を言ってくれた。それが嬉しくて一護はその冗談に精一杯応えてやろうとくすくすと笑った。本当に面白かったし心が温まったので、本気で心の底から笑えることができた。
「俺、こんなに笑ったの久しぶりだ」
「それは良かった。笑うことは体にいい影響を及ぼすそうだからな」
 至近距離でにっと笑いかけられて、一護も照れたように微笑み返した。そしてそのまま、それが当たり前だというように二人の距離が縮まって、
「だ、駄目だ、」
「‥‥‥なぜ?」
 触れそうになった寸前で一護の掌が浮竹の唇に押しあてられた。
 自分の手の下で浮竹が喋るものだからそれがくすぐったくて同時に恥ずかしくて、一護は頬を染めて俯いた。
「すまん、嫌だったか」
 会ってすぐのことだった。知っているのは名前と病名だけだ。
 告白すらしていないというのに、いきなり口付けは普通抵抗があるだろう。
「そ、そうじゃなくて」
 一護は慌ててそれを否定した。口付けしたいと思ったのは自分も同じだ、嫌な筈が無い。
 心は既に奪われていた。
 だが好きだからこそ、今はちょっと口付けできない理由があった。
「俺、さっき血吐いたばっかだし、」
 綺麗に拭き取ったとはいえ、さすがにそれはどうかと思ったのだ。
 もしかしたら不快な思いをさせてしまうかもしれない。
「そんなことか」
「そんなことって、っん、」
 これでも女なのだから気にする、そう言おうと顔を上げた瞬間唇を塞がれた。
 初めて感じる誰かの唇に鼓動が否応無しに跳ね上がる。肺だけでなく心臓までもが病に冒されたのか、そう錯覚するほど鼓動がどきどきと胸を打った。
「ん、っあ、ちょ、」
 ちょっと待って、と制止しようとしたがするりと滑り込んできた舌に己の舌を絡められて、抗議の言葉は消えていった。
 血の味がするだろうに、それでも優しく舌を吸い上げてくる浮竹にどうしようもなく愛しさが募った。会ってその日に好きになって、口付けまでするなんて。
 心の中で心配性な弟に謝って、その後は目の前の人に集中した。
 やがて長い口付けが終わり、互いをうっとりとしたように見つめ合った。
「‥‥一護」
「‥‥十四郎さん」
 もう一度、というふうに顔を近づけ合った瞬間、
「どおゆうこと?」
 口付けに夢中で気が付かなかった第三者の存在に、二人は驚いて顔を離した。そして振り返った先にいたのは先日隊長に昇格したひょろりと背の高い男だった。
「なんだ、ギンか」
 弟かと思ってびびった。
 だが見られたのはその弟の元部下のギンで、一護はほっと息をはいた。
「なんだやないわ!どーゆーことなん、これ!?」
「どーゆーって、なあ?」
 どうゆうことなんだろう。
 二人の関係はたった今出会ったばかりの関係で。
「一護ちゃんひどい! ボクが隊長になったら結婚してやるってゆうたやん!!」
「言ってねー!!」
 お祝いしてやるとは言ったが、結婚するとまでは言っていない。
「知り合いなのか?」
「弟の、元部下」
 例の心配させたくない弟の部下が市丸。
 浮竹は思い当たる最悪の人物に、びしっと固まった。
「藍染はんに言いつけたる! 破局させたるからな!!」
 やっぱり。
 自分の予想が間違っていてくれればと淡い期待をしたが、一護の言う弟は間違いなく藍染らしい。
「僕がどうしたって?」
 噂をすればなんとやらだ。この後の展開がだいたい読めてきた浮竹と一護は突然の藍染の登場にそれほど驚きはしなかった。
 そしていつもは敬遠しがちなギンもこのときばかりは藍染に飛びついた。
「藍染はんっ、この二人ちゅーしとったんやで!」
「ギン!!」
「本当に?」
 いつもよりも低くてぞわっとするような弟の声に一護は思わず浮竹にしがみついた。
「本当だ」
 そう答えて浮竹もぎゅっと力を込めて一護を抱き返した。ぱっと赤くなる姉を見て藍染は奥歯を知らず噛み締める。
 抱き上げられている体勢もそうだが、その親密な空気が許せない。
「いつからなんだい、姉さん」
「えっ、えーっと、‥‥‥さっき?」
「さっき、だな」
 つい先ほど知りあったばかりだという二人にギンと藍染はそれぞれ違う反応を返した。ギンはあからさまに怒りの形相を、藍染は逆ににっこりと微笑んだ。
「なんだ。じゃあ気の迷いだね」
「へ」
「浮竹、姉さんを返してもらおうか」
 自分に言いように解釈するのは弟の良いところでもあり悪いところでもあると一護は思っていた。だが今は悪い、非常に悪い。
「じ、時間なんて関係ない!俺はこの人が好きなんだっ!」
「姉さん、駄々をこねないで」
「だ、だだ!?」
 藍染はいつも姉の一護を心配するも、子供扱いはしなかった。病弱なことを気にしている一護を落ち込ませないよういつだって気を遣ってくれていた。
 それなのにまるで言うことを聞かない子供相手にするように諌められて、一護はショックで固まった。
「藍染、俺達は本気だ」
「本気で結構。でも駄目なものは駄目だ」
 一護を奪い返そうと手を伸ばす藍染を避けて、浮竹は後じさった。一護も浮竹にしがみついて離れようとしない。
「姉さんは病弱でね」
「知っている」
「君も病弱だ」
「それが、なんだ」
 そんなことは分かりすぎるほど分かりきっている。睨んでやると穏やかに微笑み返されて、それがまるで何も分かっていないと言われたようで不快だった。
「君に姉さんの世話ができるとでも?それとも姉さんに世話をさせるつもりかな」
「惣右介!」
 無礼な弟の頬を一護は叩いた。しかし接触する寸前で振り上げた手を掴まれ勢いよく引っ張られてしまった。落ちると思い反射的に目を瞑ったが、頬に当たる布の感触に弟に抱きとめられたのだと気が付いた。
「君には無理だよ」
 くっと皮肉げに笑われて、返す言葉も無かった。温もりを奪われて空を切る己の手が無力を象徴しているようで、浮竹はたまらず握りしめる。
「分かったらもう姉さんに近づかないでくれ。自分の無力さを思い知るだけだよ」
 まるで心を読んだかのような藍染の忠告に浮竹も一護も目を見開いた。
「惣右介、離せ、」
「いけない人だ。勝手に来ては駄目だと言っていたのに」
 浮竹がしていたように藍染も優しく一護を抱き上げるとその場を去ろうとした。それに一護が必死になって抗った。
「離せ、離せよ!」
「黙って」
 一護がなおも抵抗しようとしたとき、ふっと意識が白濁し、落ちた。
「さようなら」
 鬼道で気を失わせた一護を抱いて、藍染は氷を思わせる微笑とともに去っていった。




 何かが割れる音がして五番隊の隊員は一斉に肩をすくめた。そして先ほどから騒がしいことこの上ない隊長室に視線を向けた。
 雛森も心配したような視線を隊長室に向けるが、決して入ってきてはいけないと藍染に言われていたので、ただはらはらと見守ることしかできない。
 その隊長室では一人の少女が目につくものを弟に向けて投げまくっていた。
「惣右介のバカヤロー!!」
 手当り次第にものを投げるも、その一つも藍染に擦りはしなかった。硯を投げてやるとそれはさすがに壁に当たれば凹むと思ったのか、藍染は仕方なく手で受けとめていた。
「こんなのが当たったら死んでしまうよ」
「うるさいっ、バカ! アホ! メガネ!!」
「眼鏡は伊達だよ」
 困ったように笑って藍染は眼鏡を外した。姉と二人きりのときに、こんなものは必要ない。
 やがて投げるものが無くなったのか、一護は背を向けると体を丸めて拗ねてしまった。 
 隊長室の惨状に軽くため息をつくと藍染はそろりと一護の傍に寄ってその小さな背中を撫でてやった。
「触るな!お前なんか大っ嫌いだ」
「姉さん」
 本気で悲しそうな藍染の声に一護の肩がぴくりと反応したが、それでも気は収まらないのか顔を上げようとはしなかった。
 機嫌を損ねた姉の髪を藍染は許しを乞うように優しく梳いた。昔は自分と同じ茶色い髪だったが、病のせいで徐々にその色は落ち今では明るいオレンジ色となっていた。だがこちらのほうが一護に合っていて藍染は好きだ。
「姉さん、お願いだよ。顔を上げて」
「十四郎さんとのこと許してくれるんなら、上げてやる」
「駄目だよ」
 名前で呼んでいるのが腹立たしい。
 出会ったばかりでもう心を許し合っているなどとは信じられなかった。一護は長年病で苦しんできた。自由に外に出られない人恋しさの中うっかり浮竹に出会って、同じ病に苦しむ者同士、感じた親近感を恋と勘違いしたに過ぎないのだ。
「浮竹のどこがいいんだい。姉さんを支えられるとはとてもじゃないが思えない」
「そんなこと、関係ない。あの人がバカでもアホでもメガネでも、なんだっていい、あの人じゃないと駄目なんだ」
「貶した上に惚気ないでくれるかな」
 蹲ったように座る一護を抱き上げると己の膝へと乗せた。案の定じたばたと暴れる一護を両腕で拘束して、強引に視線を合わせた。
「たったひとりの家族よりもあの男を選ぶっていうの?」
「惣右介、」
「許さないよ。そんなこと、許さない」
 骨が軋むほどに抱きしめて藍染は懇願した。それでも受け入れてくれないというのならこのまま抱き潰してしまおうか、本気でそんな恐ろしい考えが浮かんでしまう。
「くるし、」
 けほ、とあまりの痛みに一護が咳き込む。
「いた、いたい、そうすけ、」
 立て続けに一護が咳き込んだ。藍染の白い羽織に赤い染みができる。
 また喀血したのだと理解した途端に気分が悪くなった。
 けほけほと口を押さえて咳き込む一護を藍染はどこか無表情に見下ろしていた。四番隊に連れて行くべきなのに、だがそんな気にはなれなかった。
 血を吐くくらいはいつものことだ。だがときどきひどく大事に至ることがあった。これがもしその大事ならば、一護はこのまま死んでしまうかもしれない。
 しかし、
「姉さん、苦しい?」
 顔色が悪くなっていく姉に藍染は優しい声音で分かりきったことを尋ねた。一護は聞こえる状態ではないのか、答えることはない。
「僕も苦しいよ」
 死覇装の上から心臓のある部分を押さえて藍染は自嘲気味に呟いた。
 口の周りを血で汚す一護は美しい。もしかしたら浮竹もこの顔を見て心奪われたのかもしれないと思い当たり、それならば惚れるのも仕方がないと笑った。
「一緒に、死のうか」
 他の男に奪われるくらいなら今ここで一緒に死んだほうがずっと何かを許せる気がした。
 手に入れることができないならば、一緒に連れて行ってしまおう。
「ばか、」
 藍染の頬に冷たい指が当たり、そのままなぞられた。
「泣くな、ばか、」
 はあはあと苦しげに呼吸をして一護は涙を流す弟を慰めた。
 こんなに追いつめてしまうなんてと後悔ばかりが渦巻いた。
「お前が、そう望むんなら、一緒に死んでやる、‥‥だから泣くなよ」
 天秤は弟のほうへと傾いてしまった。
 浮竹に心の中で謝って、泣いている弟を力なく抱きしめてやった。
 初めての口付けは血の味で、初めての恋は実らなかった。
 だがそれでも幸せだった。幸せな夢を見れたのだと思って、一護は落ちていく意識に身を任せた。






「‥‥って夢を見たんだ」
「ありえそうで怖いな」
 一護が見たという夢の話を聞き終わって、浮竹は苦い笑みをこぼした。
 夢の内容は一護が血を吐いて廊下に蹲っているところから始まっていた。そして終盤の展開が非常に納得できなかった。
「夢らしく展開が無茶だった。出会ってすぐに口付けなんていくらなんでもあり得ねえよな」
「そうでもないと思うが」
 相手が一護ならばあり得る話だと浮竹は思った。
「一目惚れは夢の中でも同じではあったがな」
 浮竹が薬を貰うたびに訪れる四番隊で、初めて一護を見かけたのだ。そのとき一目で心を奪われた。
 ちなみに親密になってやっと口付けできたのは、出会って三年目のことだった。
「夢は夢だ。俺を選んでくれるんだろう?」
 こうして寄り添い合っているのがその証拠だったが、浮竹はあえて聞いた。そしてふわりと笑む一護に分かってはいたのだが、嬉しさがこみ上げる。
「それにしても藍染の常軌を逸した執着ぶりが夢の中でも健在だったな」
「へえ?」
 冷たい声にぎくっとした次の瞬間、浮竹は勢いよく蹴り飛ばされた。
「十四郎さん! こらっ、惣右介!!」
「姉さんと二人きりになるなと言っただろう」
 慌てて浮竹に駆け寄ろうとする姉を後ろから抱きしめて、藍染は恨めしげに睨んでくる浮竹を冷たい目で見下ろしてやった。
「恋人同士が二人きりになって何が悪いんだよ!」
「姉さん、駄々をこねないで」
「きっ、聞いてたのか、」
 同じ台詞を言われて、腕の中で一護がびくりと震えるのが伝わってきた。浮竹に向ける顔とは正反対の蕩けそうな笑みを浮かべて、藍染は愛おしそうにそのオレンジ色の髪に口付けた。
「嬉しいよ。僕を選んでくれるなんて」
「いや、夢だし。フィクションだから」
 だが自分にとって都合の悪いことは耳が自動的に排除してしまう藍染は、夢だろうが関係ないとばかりに一護に頬ずりした。
「実際の僕は死ぬなんてことはないからね。一緒に生きて幸せになろう」
「姉の幸せを願えよ」
 浮竹と出会ってからことごとく邪魔をしてくる弟の足を踏んずけてやると、力が緩んだ瞬間に恋人の元へと駆け寄った。
「大丈夫か?ごめんな、惣右介が悪さして」
 蹴られた背中を優しく撫でてやるとそのまま浮竹の胸へと抱き寄せられた。
「いや、かまわんさこれぐらい。気にしてないからな、義弟よ」
 身の毛のよだつ単語を聞いて、貼付けていた上辺だけの笑顔など捨て去り嫉妬と憎悪で染まった表情で姉を奪おうとする男を藍染は睨みつけた。
 今までにない本気の怒りを感じとって一護がぶるりと震え上がったが、浮竹は負けてはいなかった。
「義兄さんと呼んでくれてかまわんぞ」
 嫌味なくらいににっこりと微笑む浮竹の顔を斬魄刀でむちゃくちゃに斬りつけてやりたい。そんな衝動を何とか抑えて藍染も嫌味なほどにこやかな笑みで返してやった。
「あはは、浮竹ってば寝てるのかい。そんな寝言を言って、今はまだ昼だよ。それで起きてるつもりなら僕が直々に眠らせてあげよう」
 斬魄刀を抜きはらって構える弟に、一護は慌てて止めに入ろうとしたが、浮竹に肩を押さえられて振り向くと恋人も同じく斬魄刀を抜きはらっていた。
「何してんだよ!」
「ただの義兄弟喧嘩だ。こうやってぶつかり合うことで分かり合えるものなんだ」
「そうだよ姉さん。ぶつかり合ってどちらが姉さんに相応しいか分かり合おうじゃないか」
 そして一護を無視して、二人は分かり合うために刀をぶつけながらどこかへ行ってしまった。
 すっかり蚊帳の外の一護は立ち尽くすしかない。
「‥‥なんだよ、結構気が合ってるじゃねえか」
 ぶつかり合う霊圧。
 一人ぽつんと残された一護は、案外二人は息の合った義兄弟になるのではないか、そんなあり得ないことを夢見てしまった。




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