繋がっているようで繋がっていない100のお題
015 僕の女神様
ドルドーニは紳士だ。
紳士的に、攻めてくる。
「嫌?」
腰に添える手は乱暴でもなければ強引でもなく、そっと支えるようで。
それでも一護は後ろへ逃れ、嫌だと言うように首を横に振った。
「何が嫌かね? 恥ずかしい? それとも吾輩が嫌いだとでも?」
低い声で語りかけてくる、それがとても色っぽい。
「どうか吾輩の愛を受け取ってはくれないか」
男らしい手が顎を掬い、上向ける。
「子鹿ちゃん」
恥ずかしい呼び名で呼んでくる。そして少し首を傾げて伺うように視線を合わせ、しばらくは何もしてこない。けれど一護の唇がほんの少し、開いたら。
「愛してる」
その言葉のまま愛おしむように唇を愛撫された。時折掠めるドルトーニの口髭にくすぐられて一護は笑った。そうすると口付けが深くなって段々と苦しくなってくる。酸素酸素と訴えるように腕を叩いてみたが無視されて舌を一層きつく吸われた。
「んん、」
気付いたときにはもう寝台に転がされていた。ドルドーニの逞しい体が覆いかぶさってくる。
「オイっ、」
「暴れないでくれ、子鹿ちゃん」
「わぁっ、ちょっと、」
紳士というのは取り消そう。男は皆、狼だ。
鮮やかな手並みで袴を脱がされて、ドルドーニの言う通り子鹿のようにすらりとした一護の脚が露になった。その膝裏から付け根にかけてをするすると撫でられた一護は真っ赤になって足を振り上げた。
「こら、おイタはいけないな」
足首を捕まえられ、そして足の甲に唇を押し当てられた。騎士が忠誠を誓うように。
「おっさん、何して、」
「黙りたまえ」
もう一度、甲に口付けられる。それから足の指一本一本へと丁寧に唇が滑っていった。
一護はもう声も出ない。抵抗を忘れ、その光景を凝視した。
「こうして愛を捧げるのは子鹿ちゃんだけだ。だから、どうか」
男に愛を乞われて一護の中の何かが疼く。どうしようもなく目の前の男が可愛く思え、一護は起こしていた上半身をゆっくりと後ろに倒した。
そして恥ずかしげに目元を染め、頷くように一度瞬きした。
その食べてくださいと言わんばかりの行動にドルドーニがすばやく腰を捉えて引き寄せてくる。唇が重なる寸前で、一護の手に押しとどめられた。
「子鹿ちゃん‥‥‥‥」
「手に、」
「?」
「してほしい」
ドルトーニの胸に当てた手を眼前へと掲げた。その意を介したドルドーニは少年のように笑った後、次にはもう男の顔で一護の手を恭しく受け取った。
「忠誠を」
手の甲へと口付けて。
その仕草一つで一護の心臓はどきりと大きく跳ね上がった。普段は変なおっさんだがたまに、極たまに格好良いのだ。
「俺も」
一護のほうもドルドーニの額へと口付けた。仮面の硬い感触しかしなかったが、気持ちを込めて長めに押し当てた。
いつもと違う、少し神聖な空気の中。
けれども次の瞬間にはドルドーニの引き締められた表情は崩れ去り、「子鹿ちゃーん!」なんて叫びながらも襲いかかってくるものだから。
「雰囲気ぶち壊し!!」
とりあえず一発殴っておいた。